最近よく聞く「Steam教育」って何? 理数科目より芸術のほうが重要? 注目ワードを専門家が解説

中内玲子

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世界の先端企業が集まるアメリカのシリコンバレーで日英バイリンガル幼稚園Sora International Preschool創設し、教育事業のアドバイスをするコンサルタントとしても活躍する中内玲子さん。国籍や人種を問わず多くの子どもたちと接してきた経験をお持ちです。

そんな中内さんが重要視しているのが「Steam教育」です。学校教育や受験の現場などでも頻繁に登場するこの言葉、近年特に注目されています。Steam教育とはどんなものなのか、中内さんに解説していただきます。

※本記事は中内玲子著『シリコンバレー式 世界一の子育て』(フローラル出版刊)より一部抜粋・編集したものです

21世紀型人材を育てるSTEAM教育 科学、技術、工学、数学とアートを融合した教育

STEAM(スティーム)教育は、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)を合わせたSTEM(ステム)教育に、「芸術(Art)」を融合させた教育法で、今、シリコンバレーをはじめとして、世界中で注目されています。

アメリカ最高の美大とされるロードアイランド・スクール・オブ・デザイン(RISD)の学長だったジョン・マエダは、2008年にRISDの学長に就任した際に、「STEMからSTEAMへ」を掲げ、新たにSTEM教育とアートやデザインを融合した教育の必要性を指摘しました。

「20世紀にサイエンスとテクノロジーが世界経済を一変させたように、アートとデザインは21世紀の世界経済を一変させる準備ができている」というジョン・マエダの言葉から、STEAM教育が今後の各国の成長の鍵となることがよくわかります。
今、最重視されているのは「アート」と「デザイン」

プログラミングや理数系科目など、STEM教育の重要性は比較的わかりやすいですが、なぜアートやデザインが重要視されるのか、ピンとこない方もいるでしょう。

新たに追加された「A(アート)」はひと言で言うと「芸術」ですが、美術や音楽のほか、創造性、感性、デザイン思考、コミュニケーション、さらには言語や歴史など、幅広い要素が含まれます。

製品のデザイン(見た目)を美しく整えるといったクリエイティブな側面だけでなく、ユーザーを理解し、潜在的なニーズを掘り起こし、それをもとに製品をつくり出す「デザイン思考」や、その過程における「問題解決」もアートとデザインの役割です。

理数科系の科目よりも注目される「デザイン思考」

もともと、英語の「design」には、「(ものの見た目を整えるために)デザインする」という意味だけでなく、「設計」「計画」「立案」「開発」といった意味もあるのです。

アメリカでは今、MBA(経済学修士)よりもMFA(美術学修士)を持つ人材が求められるようになり、早朝から美術館で行われるギャラリートークには多くのビジネスマンが集まっています。これは、従来ビジネスで必要とされた論理的思考や批判的思考だけでなく、デザイン思考が重視されているためです。

このデザイン思考は、スタンフォード大学のハッソ・プラットナー・デザイン研究所(通称d.school)が提唱するもので、グーグルやアップルなど、世界をリードする企業がビジネスに採用しているアプローチです。

デザイン思考のプロセスはまさにイノベーションを起こすためのプロセスであり、今後、あらゆるビジネスに必要な考え方です。

STEAM教育では、「プロジェクトベース学習(PBL)」で、このデザイン思考のプロセスを用いて問題解決能力を養います。長男の通っていた小学校でもプロジェクトベースのアクティブラーニングが行われていました。

STEAM教育のメリット

韓国教員大学校のカン・ナムファ教授は、さまざまなSTEAM関連の文献調査や、小学校でSTEAM教育を受けた大学生や教師たちへのインタビューを通して、STEAM教育の成果を明らかにしようとしました。
 調査の結果、STEAM教育には、創造性、主体性、達成感、自尊心、困難な課題に挑戦する意欲やコミュニケーション能力などが向上するというメリットがあることがわかりました。
 また、小学生の頃にSTEAM教育を受けた大学生たちは、自発的な学習スキルとチームワークのスキルが大学に入ってからの研究に役立ったと述べました。
 子どもの頃からSTEAM教育に親しむことは、その後の学びにもよい影響を与えるのです。

世界に羽ばたくために家庭で育てたい「5つの力」 世界で求められる力は家庭でこそ育つ

新しい学校教育に期待を寄せつつも、まかせきりにするのは賢い子育てとは言えません。幼児期は特に、親が子どもをよく見て、子どもと関わりながら、能力を伸ばしてあげるのが一番です。

そこで、語学力や非認知能力、STEAMなど、世界で求められる力を日本の家庭教育でも伸ばしていただけるように、つぎの「5つの力」にまとめ直してみました。

これらの「5つの力」は、最先端の教育法をもとに私が選んだ、「子どもが自分の才能を生かして世界で羽ばたくために欠かせない力」です。

自己肯定感

すべての力の基盤となるもの、子どもの成長における「栄養」のようなものです。自己肯定感がなければ、意欲や行動力、コミュニケーション能力などが育ちませんし、子どもの持てる力を十分に発揮することができません。日本人は特に自己肯定感が低いので、最重視していただきたい力です。

考える力

豊かな想像力や感性、思いもよらない発想、ものごとを分析する力や自分で考えて判断する力は、まだ言葉を十分に話せない1歳の子どもでも育てていくことができます。さまざまな体験や遊び、読み聞かせ、美意識を育てる家庭環境がこれらの力を養います。

意志力

非認知能力に含まれる忍耐力や自己制御能力は、「意志力」を養うことで身につきます。意志力とは、自分のやるべきことをやり遂げるために、自分の思考や感情、行動などをコントロールする力です。意志力と似たものに「実行機能」がありますが、幼児期に実行機能を身につけるかどうかが、その後の人生にも影響すると言われています。

社会的スキル

協調性やコミュニケーション能力、共感する力も、これからの世の中に欠かせない非認知能力です。これらは、AIにはない人間だけが持つ能力でもあります。また、5つめの国際的スキルは、社会的スキルがなくては育ちません。

国際的スキル

英語をはじめとした語学力は、世界と渡り合うための基本ツールです。日本人であれば、日本語と英語のバイリンガル、あるいは日本語、英語、中国語のトリリンガルなど、多言語話者を目指すのが理想です。

ただし、語学力だけでは不十分です。多様性や文化の違いを尊重し、自国の文化を大切にしながら、他国への理解を深める国際的なマインドがあってはじめて、国際社会で通用するスキルが育ちます。

この5つの力は、学校や塾に頼らずとも育むことができます。むしろ、家庭でなければ育てられない力も多いかもしれません。子どものことをよく知っていて、子どもとの愛着関係を持つ保護者だからこそ、育てられるものです。

シリコンバレー式 世界一の子育て(中内 玲子)

シリコンバレー式 世界一の子育て(中内玲子著、フローラル出版刊)

シリコンバレーのバイリンガル幼稚園経営者が教える 『世界に羽ばたく子』の育て方!
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・モンテッソーリ教育、レッジョ・エミリア教育など一流の教育法をベースにした子育て法
・自身の3人の子どもをトリリンガルに育てた教育者の0〜6歳の語学教育とは?
・⾃⼰肯定感、考える力、意志力、社会的スキル、国際的スキル----新時代に必要な「5つの⼒」を育てる